日本漁業の「獲りすぎ・頑張りすぎ」について考える今回の連載。
筆者は「頑張りすぎないために、科学者の知恵を入れながら漁業を管理した方が良い」と書いてきました。
ここでよくある疑問として
「日本では漁師さんの自主的な漁業管理が浸透している(問3参照)んだから、わざわざ税金をかけて厳密な科学調査や漁業監視をする必要はないんじゃ?」
というものがあります。
たしかに、厳密な漁業管理にお金がかかるのは間違いありません。
コストパフォーマンスを考え、お金をかける魚種を絞るなど工夫が必要でしょう。
その他の魚種に対しては、コストのかかりづらい方法も有効活用した方が、税金をかけずに済みます。
ただし、漁業の技術が発達した今、科学的・客観的な検証なしに漁業を管理しても、「頑張りすぎ」を止めることは簡単ではありません(問4・問7など参照)。
科学にコストをかけないケースでも、「漁師さんたちがOKを出したか否か」で管理策を決める現状のり方(問4参照)に加え、できるだけ「客観的に見て効果を発揮しそうか否か」検証する体制をつくった方が、効果は上がるでしょう。
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客観的に魚の状態を見るには、水研機構や地方水試のデータを使えます。
今まで、科学者がデータ類を取っても、「『頑張りすぎ』を指摘したら漁師さんに怒られるから」などの理由で活用できていないケースが多くあったようです。
埋もれているデータを生かさない手はありません。
埋もれてきた沿岸小規模漁業の操業データを集約して、より客観的に海の状態を調べるというもの。埋もれていたデータの掘り起しなので、コストもさほど大きくありません。
これまで、「データ不足なので、小規模漁業に科学的な管理はすべきでない」という漁業関係者も多かったですが、これで風穴が空くでしょう。
情報を極力冷静に受け止め、より広い視野から必要な対策を練っていければ、魚と漁業を未来に残しやすくなります。
それに、こうして客観的な情報が集まれば、必要以上に厳しい「頑張りすぎ」対策が入って漁師さんを苦しめることも減るでしょう。
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さて、実際に漁業の「頑張りすぎ」をコントロールする方法として、大きく分けて2つの方法があります。
1つ目が「アウトプット(数量)コントロール」。2つめが「インプット(努力量)コントロール」です。
当たり前ですが、数量をコントロールをするには、「魚が何トン獲れたか」を記録して、「漁獲量が○トンに達しました!これにて操業打ち切り!!」と線引きしないといけません。
漁船1隻1隻を見張って、魚1種類1種類の漁獲量を調べる必要があります。調べるには人手がかかりますから、コストが高くなります。
一方、努力量のコントロールは、漁期や漁場、漁具の種類などなどを規制する方法です。
あまり監視が要りませんから、コストも安くなります。
ただ、努力量のコントロールは抜け道が多いです。例えば「漁期が半分に短縮されたから、代わりに網を投げる回数を2倍にしちゃおう」「もっと良い魚群探知機を使っちゃおう」なんて工夫が簡単にできます。
最近「数量コントロールが大切だ、努力量のコントロールは効果が薄い」なんて報道が多くあるのですが、一理あります。
とはいえ、コスト的に数量コントロールができない漁業が多いのも確か。そういう漁業には、冒頭の国の事業などを活かしながら、科学的に「どれくらい努力量を抑えれば魚を増やせそうか」考えていくのが良いかと思います。
筆者の周りには「漁船数(≒監視コスト)の少ない大規模漁業には数量コントロールが効果的。ただ、漁船数の多い沿岸小規模漁業には努力量規制の方が向きやすい」という専門家が多いのですが、ごもっともだと思います。
大切なのは「数量をコントロールしているか」ではなく、「導入するコントロール策が十分かどうか」なのです。そのために、各漁業に合った方法を考えていくのが効果的でしょう。
