漁業の「獲りすぎ・頑張りすぎ」について考える今回の連載。
最近、頑張りすぎ問題でよく非難されているのが近隣国、特に中国です。
たしかに、マサバやスルメイカなどに関しては、中国が無秩序に獲っているせいで日本近海の資源が脅かされています。
また、北朝鮮や台湾、ロシア、韓国の漁業に脅かされている魚種もいます。
ですが、前回の通り、国内の主要魚種の多くは、日本人の「頑張りすぎ」で減っています。
「外国だけ」「日本だけ」のせいにせず、両方に対策しないといけません。
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去年から中国の漁船が日本の道東三陸沖に現れ、サバを大量に獲っています。
日本は近年、サバ漁に科学的な規制を強めているものの、中国の漁には科学的な規制がありません。しかも中国の獲る量の半数近くは違法船によるもので、コントロールが効いていないもよう。
このままではサバ資源にダメージが出てしまいそうです。
https://jp.sputniknews.com/world/201704143535238/
去年から今年、記録的な不漁にあえぐスルメも中国船に追い詰められています。
中国漁船は昨年、北朝鮮水域で日本の倍近くを獲った可能性があります。
北朝鮮船が日本水域に密漁に来るケースも去年から増えています。
これらは現在激減中のスルメ資源に追い打ちをかけていると考えられます。
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/69750
外国船の多獲がよくニュースになっているのはサンマ。サンマ漁でも中国が槍玉に挙がっていることが多いですが、2016年の漁獲シェアでみると1位は台湾。2位以下に日本、中国、ロシア、韓国が続いています。
そして台湾や中国、ロシア、韓国は日本と比べてサンマ漁の規制に消極的。今年のサンマ資源は過去最低レベルに少ない様子なので、漁獲で追い打ちしないよう、各国に協力してもらえるよう促す必要があるでしょう。
http://tnfri.fra.affrc.go.jp/press/h29/20170804/20170804sanmayohou.pdf
このほか、外国船が日本近海で無秩序な漁をしている例としては、韓国船のタチウオ漁、台湾船のマチ類漁、ロシアのタラ類・カレイ類漁などが有名です。
このように、外国漁船が日本近海の魚にダメージを与えているケースは、間違いなくあります。これらには外交などによる対策が必要でしょう。
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ただし、何でもかんでも外国船「だけ」のせいにしないよう注意が必要です。
例えばサンマ。サンマの成熟の速さや漁獲死亡率の低さを考えると、今の資源の減少は乱獲が主因とは考えづらいです。何かしらの環境条件のせいで資源が減っていて、そこに追い打ちをかけないような保護策が必要…というのが適切です。
しかし、大手メディアの報道の多くは「外国船の乱獲でサンマ資源がピンチ!」という論調。しかも、日本の半分しか漁獲量のない中国を槍玉に挙げているケースがかなり多い。
要するに、外国を叩くことありきで、誇張したり捻じ曲げたりした情報が溢れているということです。
確かに、「日本漁業は悪くない。悪いのは外国」と言っていたら、外国嫌いの視聴者・購読者は喜んでくれるでしょう。
そして、日本国内の漁業関係者を批判する必要もない。だから、漁業関係者から怒られる心配もありません。
ですが、前回お書きしたように、日本の主要な魚種の多くは日本漁業の「頑張りすぎ」で減っている可能性が高いのです。
この問題は、外国だけのせいにして対策を怠っていても解決しません。
例えば、今や絶滅危惧種の太平洋クロマグロ。日本は「ウチだけでなく韓国も太平洋クロマグロを獲っている。韓国が漁獲規制しないから日本も厳しい規制をされたくない」と言ってきました。
ですが、日本は太平洋クロマグロ漁獲シェアの6~8割、韓国の10倍ほどを獲っています。
韓国の存在を言い訳に、漁業規制が遅れてきた面は否めません。もっと前から日本(と漁獲シェア2位のメキシコ)さえしっかり漁業規制すれば、ここまで減ることはなかったはずです。
今、太平洋クロマグロの漁獲規制が厳しいせいで苦しんでいる漁師さんが日本中にいます。
ここまで苦しい規制が必要になった背景には、日本側の対応の遅れもあったのです。
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対応が後手に回らないような工夫が、これからの漁業に必要ではないでしょうか。