「海を守る」とかいう漠然とした言葉の意味を、おこがましくも考え続けるブログ

魚オタクの筆者が、「海を守ること」「より多くの人が海の恩恵を受けること」をテーマに、たくさんの人の知恵をつなげようというブログです。 科学的な目線、社会的な目線…色々な視点から、より多くの方と関われればと考えています。 ご賛同もご反論も、ドシドシお願いします! ブログの詳細はこちら http://take-to-enjoy-the-ocean.blogism.jp/archives/2690844.html ※あくまで個人的なブログです。所属する会社等とは無関係ですのでご注意ください。

タグ:漁業/魚食

僕がメキシコにダイビングに行った時のこと。

ボートで移動していると、近くに大きな船が見えた。


隣のメキシコ人水中写真家が言った。
「おい、巻網の船だぞ」。
なるほど、大きな網を積んでいる。


彼は続けた。
「知っているか?この海域では、ああいう大規模漁業が禁止されているんだ。だが、彼らはマグロを獲っていってしまう」。


僕は聞き返した。
「本当に?こんな目立つ場所で?」


「ああ、政府は水産企業から裏金を受け取っているから見て見ぬふりさ。
マグロは日本の企業が買いつける。裏金の大元は日本なんだ」。

【クロマグ論~無駄な悪口、もうやめない?~】


世界のクロマグロの消費の7~8割は日本だという。


そして太平洋で獲られるうち、98~99%は成熟前の小さなマグロ。

産卵できなくなったクロマグロは絶滅危惧種と言われるまでに減ってしまった。


このままじゃ、クロマグロは庶民の手に届かないものになってしまう。
マグロを取引する会社も、仕事を失ってしまうだろう。


そんな中、先週、クロマグロの保護を話し合う全国会議があった。
水産庁の代表は言った。

「手遅れになる前にメキシコの獲りすぎを規制するのは大切。だがメキシコのマグロを食べるのは日本。流通の人たちも一緒になって協力すれば、日本国内でもかなり対策できる」。


僕も、どうしたら日本国内でマグロを食べる量を減らせるかとか、どうやって密漁モノを売らせないかを考えた方が良いと思う。


で、この記事。
http://www.asahi.com/articles/ASG914S01G91ULFA01B.html
「クロマグロ保護、韓国の説得が焦点」。


これはどうなんだろう?
食べる側、日本の責任に触れないのはおかしいと思う。


それに太平洋のクロマグロを1番多く獲っているのも、実は、日本の船。2番目がメキシコで、韓国は3番目だ。
http://blogos.com/article/93385/


たしかに、韓国にルールを守ってもらうのは大切なこと。そして、韓国が漁獲規制を守りたがらないという話はよく聞く。責任を問うのも当然のことだ。


でも、韓国の10倍クロマグロを獲っている日本の漁業を律することは、韓国の漁業を規制することの10倍大切じゃないかな。
だからこそ、ついに水産庁も本腰を入れてクロマグロの保護に乗り出したんだろうし。


裏返せば、マグロを一番食べるだけじゃなく、一番獲って、保護だけ本腰を入れられてこなかったのが、僕ら日本人だ。
外国人だけに責任をなすりつけるような報道は、乱暴すぎると思う。


マグロを食べ続けるために何を意識すべきか。
例えば、「子どものマグロを食べず、大きいマグロを仕入れているお店を探そう」と伝えた方が、ずっと意義がある。


まして、韓国の名前だけを出すのはどうなのかな。ただでさえ日本と韓国の仲が怪しくなってきているのに、実態以上の偏見を煽るだけな気がする。
もちろん、「やっぱ韓国のせいか!」なんてスッキリする人も少なくはないんだろうけど…


本当は、人間同士の問題を解決するって、言い分を理解しあって、お互いが得をする(WIN-WINの)方向に調整することだと思う。

例えば、韓国の水産会社と
「乱獲や密漁をしてたら、あなたからマグロは買わないよ」
「ちゃんとしてくれたら、これからは高い値段で買うからさ」…と交渉するとか。


誰かを悪者にするだけじゃ、問題解決は進まない。
悪者を作って見下して、相手の一部分だけを見て「お前だけが悪いんだ」。
これじゃ、いがみ合いばっかり続いてWIN-WINになんかならないもの。


僕は誰かを悪者にしてスッキリするより、美味しくて格好いいクロマグロを、年老いるまで食べたり見たりし続けたい。
だから、こういう無用な対立を煽るような報道はやめて、問題解決を促して欲しい。
悪者潰しのような報道を見た人には、踊らされて欲しくない。


クロマグロは、本当はすごく貴重な魚。

沢山とって、安売りして。
売上回復!株価安定!!どうにかノルマを守れたよ!!!


…こんな感じでは、減ってしまうと分かった。


でも、少しずつ大切に食べていれば、きっと、また増える。
そうすれば、僕らは年老いるまで、自分たちの子や孫と一緒に、美味しいクロマグロを楽しめるはずだ。


今、自分が食べているマグロはどこで獲れたのか?誰が売買してきたのか??産卵前の子マグロを食べすぎていないか???

マグロのお寿司が好きな皆にも、ぜひ、考えてほしいな。

「日本人の魚離れ」という言葉を聞いたことがありますか?

近年の日本。魚が減り、獲れなくなり、価格が上がった。安い畜肉も流通している。
色々と重なった結果、魚の消費量が落ち、「魚食文化の危機!」なんて言われている。

「海や魚を守ること」「より多くの人が海の幸の恩恵を受けること」をめざす当ブログとしては、悲しいことです。

では、どうすれば良いのか。筆者は

①魚を「たくさん食べる意識」から「おいしく食べる意識」への転換

②「ハレの魚」と「ケの魚」の区別


の2つが大切だと考えています。

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①魚を「たくさん食べる意識」から「おいしく食べる意識」への転換

これが必要な理由。
第一は「多くの魚種が減っていて、これ以上たくさんは獲れないから」。
そして「減った魚を無理して獲り続けると、海中で産卵すべき魚すら獲り尽くしてしまい、将来、もっと魚が減ってしまうから」です。

漁師や水産業者が魚を獲る/売る量を減らす

水産業者は魚1尾あたりの値段を上げて収入を保つ
(値段が高い魚でも売れるよう、魚の味を高める)

魚の味が良くなることで、消費者は値上がりにも納得できる

…という方向性が大切になります。

さて、こういうと「魚を獲ったり食べたりする量が減ったら、それこそ魚食文化の危機じゃないか!」というお叱りが聞こえてきそうです。

そこで、カギになるのが②だと思っています。


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②「ハレの魚」と「ケの魚」の区別


これはつまり、「たくさん安く獲って良い魚種」と「たくさん獲ったら壊滅してしまう魚種」を分けて考えるということ。

例えば近年、日本の海にいなくなっていたマイワシが復活しつつあり、よく獲れるために価格も安くなりつつあります。
このマイワシ、お安いけれど実はとっても美味しい。
特に今、梅雨時のマイワシは脂がのっていて刺身にも最高です。

こういうお魚は、あまり遠慮せず安く売買して、高い頻度で食べていけます。

逆に、日本のウナギやクロマグロ。
今、普通に安売りされていますが…安売りというのは多量に売るから商売になるわけです。
両種とも絶滅危惧種なのに、多量に売っている場合じゃないはず。

しかも、安売りの商材は、コストをかけない獲り方や処理をされています。
安かろう悪かろうで、正直、美味しくないことも多い。
消費者からすれば「せっかく高級魚を買ったのに、おいしくない」となりがちです。

こういう希少な魚種は、まず水産業界が無闇に安売りしない。獲る量を厳しく規制し、売る量も絞って、代わりに美味しい状態で出す。
消費者側は、こういう魚をちょっと特別な「ハレの日」にだけ、それなりの金額を出しておいしく食べるべきでしょう。


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そんなこんなで、このブログで漁業/魚食について書くときは今後も

①魚を「たくさん食べる意識」から「おいしく食べる意識」への転換
②「ハレの魚」と「ケの魚」の区別


この2つのテーマを柱にしたいと思います。

これからは、①や②の背景や実践方法について、具体的な話を書いていく予定!
水産業界目線、消費者目線、科学者目線、未来志向…色んな角度からお話したいと思います。

漁業/魚食は筆者の専門とも近いので、この辺の話題が向こうしばらくは中心になるかと思います。
良かったらお付き合いください♪

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