僕がメキシコにダイビングに行った時のこと。

ボートで移動していると、近くに大きな船が見えた。


隣のメキシコ人水中写真家が言った。
「おい、巻網の船だぞ」。
なるほど、大きな網を積んでいる。


彼は続けた。
「知っているか?この海域では、ああいう大規模漁業が禁止されているんだ。だが、彼らはマグロを獲っていってしまう」。


僕は聞き返した。
「本当に?こんな目立つ場所で?」


「ああ、政府は水産企業から裏金を受け取っているから見て見ぬふりさ。
マグロは日本の企業が買いつける。裏金の大元は日本なんだ」。

【クロマグ論~無駄な悪口、もうやめない?~】


世界のクロマグロの消費の7~8割は日本だという。


そして太平洋で獲られるうち、98~99%は成熟前の小さなマグロ。

産卵できなくなったクロマグロは絶滅危惧種と言われるまでに減ってしまった。


このままじゃ、クロマグロは庶民の手に届かないものになってしまう。
マグロを取引する会社も、仕事を失ってしまうだろう。


そんな中、先週、クロマグロの保護を話し合う全国会議があった。
水産庁の代表は言った。

「手遅れになる前にメキシコの獲りすぎを規制するのは大切。だがメキシコのマグロを食べるのは日本。流通の人たちも一緒になって協力すれば、日本国内でもかなり対策できる」。


僕も、どうしたら日本国内でマグロを食べる量を減らせるかとか、どうやって密漁モノを売らせないかを考えた方が良いと思う。


で、この記事。
http://www.asahi.com/articles/ASG914S01G91ULFA01B.html
「クロマグロ保護、韓国の説得が焦点」。


これはどうなんだろう?
食べる側、日本の責任に触れないのはおかしいと思う。


それに太平洋のクロマグロを1番多く獲っているのも、実は、日本の船。2番目がメキシコで、韓国は3番目だ。
http://blogos.com/article/93385/


たしかに、韓国にルールを守ってもらうのは大切なこと。そして、韓国が漁獲規制を守りたがらないという話はよく聞く。責任を問うのも当然のことだ。


でも、韓国の10倍クロマグロを獲っている日本の漁業を律することは、韓国の漁業を規制することの10倍大切じゃないかな。
だからこそ、ついに水産庁も本腰を入れてクロマグロの保護に乗り出したんだろうし。


裏返せば、マグロを一番食べるだけじゃなく、一番獲って、保護だけ本腰を入れられてこなかったのが、僕ら日本人だ。
外国人だけに責任をなすりつけるような報道は、乱暴すぎると思う。


マグロを食べ続けるために何を意識すべきか。
例えば、「子どものマグロを食べず、大きいマグロを仕入れているお店を探そう」と伝えた方が、ずっと意義がある。


まして、韓国の名前だけを出すのはどうなのかな。ただでさえ日本と韓国の仲が怪しくなってきているのに、実態以上の偏見を煽るだけな気がする。
もちろん、「やっぱ韓国のせいか!」なんてスッキリする人も少なくはないんだろうけど…


本当は、人間同士の問題を解決するって、言い分を理解しあって、お互いが得をする(WIN-WINの)方向に調整することだと思う。

例えば、韓国の水産会社と
「乱獲や密漁をしてたら、あなたからマグロは買わないよ」
「ちゃんとしてくれたら、これからは高い値段で買うからさ」…と交渉するとか。


誰かを悪者にするだけじゃ、問題解決は進まない。
悪者を作って見下して、相手の一部分だけを見て「お前だけが悪いんだ」。
これじゃ、いがみ合いばっかり続いてWIN-WINになんかならないもの。


僕は誰かを悪者にしてスッキリするより、美味しくて格好いいクロマグロを、年老いるまで食べたり見たりし続けたい。
だから、こういう無用な対立を煽るような報道はやめて、問題解決を促して欲しい。
悪者潰しのような報道を見た人には、踊らされて欲しくない。


クロマグロは、本当はすごく貴重な魚。

沢山とって、安売りして。
売上回復!株価安定!!どうにかノルマを守れたよ!!!


…こんな感じでは、減ってしまうと分かった。


でも、少しずつ大切に食べていれば、きっと、また増える。
そうすれば、僕らは年老いるまで、自分たちの子や孫と一緒に、美味しいクロマグロを楽しめるはずだ。


今、自分が食べているマグロはどこで獲れたのか?誰が売買してきたのか??産卵前の子マグロを食べすぎていないか???

マグロのお寿司が好きな皆にも、ぜひ、考えてほしいな。