2章本編 http://take-to-enjoy-the-ocean.blogism.jp/archives/16613762.html のように
日本の漁業に影響力の強い政治家や学者の間では、

「日本の(特に沿岸の)漁業管理は実効的」という意見が一般的です。

ですが、よく聞いていると

 

  一部の成功例だけを見て「日本(全体)は素晴らしい」と引き伸ばし

していることが多い。

 

それに

  漁獲が減ったのは、魚価安で漁師さんが海に出ないから

  資源が減ったのは、漁獲じゃなく環境条件のせい

  資源を乱獲したのは、日本じゃなく外国

などの情報は、根拠不足でも信用されがちですし


⑤資源が乱獲されているという証拠がない

という話も相まって

「だから日本は漁業規制を強めなくて良い」と結論されるケースが見られます。

どれも、もう少し幅広い知識から考える必要があります。

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  成功事例の引き伸ばし

日本には、瀬戸内海のサワラ、北海道留萌のマナマコ、
(環境悪化前の)伊勢三河湾のイカナゴなどなど、

漁師さんの自主性を重んじた漁業管理を行い資源の回復に成功た例があります。
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/75992


これ以外にも、漁協主導の自主管理は全国の漁村に定着しています。
2011年から水産庁が始めた「資源管理計画」では、
行政に何らかの計画を出した漁業が、国内の漁獲量の9割をカバーしています。

しかし、この計画、科学的な裏づけがなくても承認されます。
「市場が休みの日は休漁します!」みたいな計画もあるとのことですが…
いや、それ元から休漁してたでしょ!!
「漁獲を休むんだから、資源管理です」と言いますが、人間の都合に合わせやっていて
「海や魚がどういう状態だから、こうします」という視点に欠ける場合も多いようです。
実際、事業が始まった後も資源状態や漁獲量は改善せず、むしろ減りました。
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/87291

http://take-to-enjoy-the-ocean.blogism.jp/archives/4430816.html

つまり日本式の自主規制には成功事例もあるものの、機能していないものがより多い。

確かに、本編のように、漁師さんの自主規制にはメリットも多くあります。
関連する漁師さんたちが話し合い、納得した上で規制するから
ルールの遵守率が高く、また漁師さん自身の知識や監視能力も活かせる。

自主的管理の長所を指摘しまとめ上げた故エリノア・オストロム氏は
ノーベル経済学賞も受賞しています。
これを根拠に「自主管理メインの日本は世界最先端」
とする意見は、日本の漁業団体などの間でよく聴かれます。

https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1409re4.pdf

ただ、オストロム理論の前提は、「資源が漁村の前の海から出て行かないこと」です。
漁村の内外を出入りする回遊魚は、漁村の知識だけで「どれだけ資源がいるか」を
把握しづらく、漁業規制しようにも、どれだけ厳しくすればいいか分からない。
また、1つの漁村が資源を守っても、他の漁村が獲りすぎれば意味がなくなってしまう。
結果、回遊魚は漁村同士で早獲り競争になってしまうことが多いのです。
自主管理にはこういう弱点があるのですが、弱点に触れず長所だけ強調する関係者が
日本の水産業界に目立ちます。
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/78395


1章のように小規模漁船が多く、行政だけでは漁業を監視しづらい難しい日本。
漁師さんの目で監視する自主規制が定着していることは、理に適っているし誇れます。

しかし、漁獲技術の発達した今、もう一工夫なければ、資源を守れないケースも多い。
日本の漁業管理を「実行的」と言い切るのは、現状、難しいでしょう。


  「漁獲が減ったのは漁師さんが海に出ないから」

というケースは、もちろんあります。ですが、現存のデータを見ると
「漁獲努力あたりの漁獲量(CPUE)」が減っている魚種が多い。

つまり、出漁の回数より、魚自体の方が、より激しく減っています。

(具体例はこちらから: http://abchan.fra.go.jp/digests2018/index.html )


 

  「資源が減ったのは環境のせい」

ということもよくあります。
魚は水温などの環境次第で大発生したり、卵や仔魚の大量死が起きたりするからです。
ですが、減ったときに獲り過ぎれば、親不足が起きる。

親がいなければ、環境が回復した後にも資源は戻りません。

http://take-to-enjoy-the-ocean.blogism.jp/archives/4443090.html


環境条件次第で増減しやすいとされているマイワシやクロマグロでさえ、
親が一定数を割れば、発生が減るという論文は出ています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/73/4/73_4_754/_article/-char/ja/
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0308597X16304973

 

これらを考えると「悪いのは環境」だから漁業規制をしないという主張は
無理があります。 https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/90189

それと、生息場の環境破壊や栄養不足などの環境悪化。
環境悪化は確実に起きていますし、そのダメージが漁業より大きい場合もあるはずです。

ですが、生息地と資源の分母が減ったなら、漁獲も見合うだけ小さくしなければ
資源は崩壊してしまいます。もしも生息地を広げたいなら、
必要なのは漁獲規制を避けることではなく、

環境が悪化したという証拠や改善するための方法を研究し、提案することです。

http://take-to-enjoy-the-ocean.blogism.jp/archives/10835503.html


 

  「資源を乱獲したのは外国」

という事態は少なからず起きています。
例えば、中国船によるスルメイカやマサバの多獲は商社や科学者が指摘するところ。
外国に規制をするよう説得するなど、難しい努力が求められます。

一方で、日本が漁獲シェアの大部分を占めているのに

「外国も(ごく一部)獲っているから」という理由で漁業規制を入れないケースも
少なくありません。この場合は日本の漁業も規制しないと資源が守れなくなります。

http://take-to-enjoy-the-ocean.blogism.jp/archives/4443090.html


  「資源が減っているという確たる証拠がない」

「科学は不確実。資源は減っていないかもしれないから、漁獲は多くしよう」
という議論も、日本では盛んです。

しかし、実はこれ、国際協定違反です。

まず、海の中のことを、人類が正確に知ることはできません。資源が少なさそうでも

「多いかもしれないというデータもある」「推計が正しいという保証はない」…

というのが当たり前です。
そんな不確実な中で資源を潰さないため、国際協定(日本水域も対象)では

「科学に不安があれば漁獲は控えめに」という予防的アプローチを求めているのです。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/H28/attach/pdf/index-5.pdf
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty164_12.html

 

それ以前の問題として、日本政府はデータを集めなさすぎました。

欧米諸国が数百魚種のデータを取る中、日本はたった50種。

どの魚がどれだけ海にいるのかほとんどわからないのです。

 魚が減っていても、実態や原因が分からない。対策も打ちづらい。

ですが、海や魚のデータ収集に予算を当たらない。
予算は70億円ほどでアメリカの7分の1以下。

水産団体の意向もあり、データ予算より漁船などを造る予算が優先されがちでした

https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/87291
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/87297

(ただ、自民党は水産研究への予算を求める声を強めています)。


加えて本編のように、乱獲を示すデータは、粗探しされて封殺さることが多い。


日本は、乱獲を示すデータや言論を見て見ぬ振りしがちだった。
科学に必要なデータも、本腰を入れて集めてはこなかった。

残念ながら、そういう傾向は否定できません。